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TOP青の祓魔師女王陛下の悪魔退治5


女王陛下の悪魔退治5
オフ化済み。
オフでは完全版ですが、こちらではweb版でとして連載いたします。
書店在庫はバードEX様にございます。
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「行けるはずないだろう」


あそこは、帰れるはずのない場所。


ずっと遠くから見ているしかない、あたたかい場所。


昔は、確かにあの場所にいた。あたたかくて優しいあそこに燐の居場所があった。
でも今の燐は悪魔。
祓魔師の敵。燐を迎え入れてくれるなんて、都合がよすぎることは、燐の想像のなかだけにしかありえない。
もし本当に快く迎え入れてくれても、虚無界の女王である燐に関わったら教会の皆に迷惑がかかる。

「では、どうして見ているのですか?」
「悪魔が襲わないように。特にあのアホの手下」

そう、燐は監視しているのだ。彼等に悪魔の脅威がないように。
深い夜空の瞳に悲しみと苦しみをたたえながら、ずっと見ているだけ。悪魔が来たら、こちらで片付ける。ただそれだけ。

「ああ‥‥あの方、やたら藤本に敵愾心を抱いてますからね。ま、あの方の藤本に対する嫉妬はともかく、あの方はね、心配なんですよ」

メフィストもまた教会の灯かりを見つめながら、誰に言うともなしに言う。
サタンが燐を過剰に心配するのはいつものことだし、獅郎に過剰反応するのもいつものこと。しかし今のメフィストのニュアンスはいつもと少しばかり違ったので、燐は少しの興味を引かれた。

「心配?」

心配症を遥かに飛び越えた所にいるサタンがこれ以上何の心配をするのだろうか。

「サタンは心配なのですよ。あなたが物質界の、あの場所に帰ってしまうことが」

燐とメフィストが見つめる先には教会。
夜のなか、細やかな光が灯るその場所。
決して帰ることの出来ない場所なのに、サタンは燐があの場所に帰ると思っているのだろうか。相変わらずバカなやつだと思う。燐を虚無界の女王にしてあの世界に縛り付けたくせに。燐にすべてを与えると言いながら、燐からすべてを奪ったあいつ。
燐の大事なもの、全部取り上げいらないものばかり押し付けてきた。


虚無界なんて、いらない。


燐が望むなら虚無界をやろうと言われたけれど、そんなもの、いらなかった。

燐はただ静かに暮らしていたかっただけ。

燐のことを思うなら、人が生き死にする僅かな、悪魔にとっては瞬きするに等しいその時間くらい、愛する人達と過ごさせてほしかった。
いつもいつもいらないものばかり押し付けてくるサタンは、燐が大事なものはすべて奪い、壊し、そして自分の選んだものだけを押し付けてくる。

燐の帰るべき場所は、物質界にはもうない。
燐が帰るべき場所は、虚無界にある。豪奢だけど空っぽでさみしい自分の城。
広い、とても広い城内に、家族と呼べるひとは誰もいない。そこが今の燐が帰るべき場所。
光の当たるあの場所ではない。


「あそこに帰れるはずないのに。相変わらず、バカなことだ」


帰りたいと考える自分も相当バカだが、サタンもバカだ。燐があそこに帰らない。帰れないのはよくわかったいるはずなのに。
ため息を吐く燐に、唇を吊り上げたメフィストが、歌うように言った。

「あなたを虚無界の女王にしたら、あなたはずっと虚無界に縛られる。最初はサタンもそう思ったのでしょうね。確かに、あなたが帰るべき場所は虚無界になった。ですが、あなたの心は常に物質界にあった。物質界の、あの教会に、家族に、友人に。本来我々は何かに縛られるものではないのに、サタンや彼等――女王の信者もバカなことです。アスタロトも、ベルゼブブも、イブリーズも、アザゼルも、エギュンもあなたをひき止めようと必死すぎて笑えますよ。ま、おかげで我々の思う通りにことが運びましたがね」

燐は虚無界での地位と力を手に入れた。使える手駒も増えた。撮影と称して物質界に行き来し、燐を賛美する信奉者たちをうまく使いながらこうして悪魔退治に清をだすことが出来る。
八侯王は、燐が自分達の作った衣装を着て華麗に戦う(編集でそう作っている)姿を目にし、益々魅了され、燐が物質界に行くことにあまり反対しなくなった。


物質界に行かない=番組終了のお知らせ=燐に好みの衣装を着てもらえない。


悪魔らしく実に明快な判断であった。
アイドルなんてやりたくはないが、これはこれで役に立つ。彼等が選んだ服をちょこちょこ弄って悪魔をぶちのめせばいいだけなのだから。メフィストは悪魔をぶちのめす燐に、もっと上品にぶちのめせとか、スカート気にしろとか、カメラに映る顔の角度まで指定してきて面倒だが、さすが萌えの伝道師。燐に恥ずかしいことばかりさせるが、そのことごとくがウケていた。世の中わからないものだ。
メフィストが協力してくれたから、燐は今こうして物質界に立っている。一々小うるさい男だがそれなりに感謝はしている。

「ああ。メフィストには一応、感謝してる。何を企んでいるのかわかんねーけど、あんたのおかげで思いの外早く俺はまたここに立てたからな」

獅郎や雪男が死んで、もっとずっと先にしか、この地に立てないと思っていたのに。数年とたたず、またこの地を訪れることが出来た。
メッフィーTVの撮影様々だ。
珍しく素直に礼を言った燐に、メフィストはふっと唇をゆるめ、トレードマークのシルクハットを取り、手を腹と腰の後ろにまわし、腰を折って優雅にお辞儀。

「それはそれは、光栄でございます。陛下」

いつもくだらないことで口喧嘩ばかりしているメフィストが丁寧な礼を取り、普段は呼ばない呼び名で呼んだりするので、ぞわりと背筋に悪寒が走る。

「おまえが俺のこと陛下とか、すげーわざとらしいんだけど。だいたいよ、おまえに陛下とか言われたら、なんかわかんねーけどやたらむかつくしんだよな。きしょいし、馬鹿にされてるみたいな気になって。あ、おまえ、今俺のこと、どうせ取り返しのつかないほど馬鹿だから馬鹿にするもなにもないとか思っただろ」
「何を言うのですか。失敬な。せっかく女王陛下に礼を尽くした臣下に対して、きしょいだのむかつくだの。しかし、私が燐のことを馬鹿だと思っているの、よくわかりましたね。いやー、燐は本当に馬鹿ですから。そこの所を燐本人もちゃんと理解しているようでよかったです。いや、本当に」

燐は自分が愚かで馬鹿なことはわかっていた。
燐に勉強を教えていた事もあるメフィストが燐のあまりの馬鹿さに発狂寸前になり、教職に就くものとしての自信を喪失しそうになるほど壊滅的に頭が悪いことはわかっていた。
ついでに燐は勉強に関しては物覚が悪く、応用力もなかった。なにせテストのマークシートや選択問題には鉛筆を転がして答え、わからない問題はカン任せ。
虚無界の女王として恥ずかしくない知識と教養をと思っていたメフィストだが、あまりの馬鹿さ加減に藤本はどーやって燐を教育してたんだと悩んだ。


自由奔放に育てるにもほどがある。育てるならもうちょっと頭の中身も育ててほしかった。
メフィストがだばだば真実を口にすると、燐は眉を寄せ、口をへの字に曲げた。
アイドルがする顔ではないから直しなさい。そう説教しようと思ったが、やめておいた。

「‥‥‥やっぱり馬鹿にしてやがったか」

ぷいとそっぽを向いて拗ねるように言う燐も可愛らしい。
普段メディアには滅多に出さない顔。今はメフィストやアマイモン以外はあまり見ることが出来ない拗ねた顔を見ると、何となく説教する気が失せる。これを衆人観衆の前でしたら唇を尖らせて拗ねるなと言っているだろう。
拗ねる燐に小さな笑みを浮かべたメフィストは、わざと燐を怒らせるような言葉を選ぶ。

「いやいや、馬鹿な所が可愛いなと思っただけですよ。馬鹿可愛い我らが女王陛下」

落ち込まれるより、ぷんぷん怒っていた方がいい。こうして悲しい顔をしている燐を見るのは‥‥なんだろう。胸が痛むという表現はおかしい気がした。

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