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TOP青の祓魔師女王陛下の悪魔退治4


女王陛下の悪魔退治4
オフ化済み。
オフでは完全版ですが、こちらではweb版でとして連載いたします。
書店在庫はバードEX様にございます。

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女王の足音




夜の闇のなかに見える、光。
沢山の人口の光が輝くなか、燐はたった一つの小さな光を見つめる。
自分には遠い場所。
遠くなった場所。
燐にとって、最も大事な光のある場所。


もう帰れない場所。


燐には、とてもとても大切な存在がいる。
それはどうしても守りたい存在。
自らのあり方をねじ曲げてすら、守りたくて、大事にしたい。そう思った。

でも、自分がいると、大事な人達を危ないめにあわせてしまう。

彼等は燐を守ろうとするから。何があっても、燐を見捨てたりしなかったから。
悪魔なのに。
燐は半分悪魔で、サタンの子供なのに、彼等は必死で、傷だらけになって燐を守ろうとしてくれた。
燐に向かって死んでくれとか、おまえがいるから悪魔が来るんだとか、燐を責めるような言葉は一切言わなかった。
誰もが皆、懸命に燐を守ってくれようとした。
命が危ないのに。死ぬようなめにあっているのに、誰も、何も、泣き言をいわず、燐をせめず。自分を責める燐に、大丈夫だから、まもるからと言ってくれた。


父と慕った人は最強のエクソシスト。


けれどその彼でも燐を守りきることは出来ない。そう気付いた時、燐は決意したのだ。
あの日、あの時に。


燐がいなければ、燐の大事な人達は平和で平穏。


上級とよばれる悪魔の襲撃を受けることはなくなるだろう。そう、燐がうまく取り引きをすれば。
自分は悪魔として、相当な力を持っているらしい。
なら、人であることを捨てて、悪魔になってもいい。それで大事な人を守れるだけの力を得るのなら、大事な人達に迷惑をかけないだけの力が手にはいるなら、悪魔でもいい。そう、思った。

父と慕うその人の前ではいつも意地をはってばかりだったけれど、本当の本当は大好きだった。悪魔になんかなったら、その人ともお別れになる。
大きな手で頭を撫でてもらうのが好きで、抱きしめてもらうのが好きだった。肩に乗せてもらって、いつもより高い世界を見るのも好きだった。
育ててくれたあの優しくつよい人に肩車してもらうこと。



怒られること。ほめられること。全部、全部大好きだった。



手放したいなんて、思ったことはなかった。


いつも燐に無償の愛情をくれるそのひと。
ずっとずっと昔、小さいころには、将来は恩返しをするのだと思っていた。雪男と一緒に老後の面倒は見てやるから心配すんなと憎まれ口をたたいたけど、本気だった。


燐が父と慕うのは、今も昔も藤本獅郎たった一人。


そして、弟。
大事な弟。
小さな頃は、弱虫で泣き虫だった弟。
でも、本当は燐に守られていたずっと昔、小さな頃から、雪男は燐よりずっと強かった。
肉体が、ではない。心が強かった。
燐は我慢がきかない子供で、しょっちゅう癇癪をおこし当たり散らしていたのに、雪男は違う。
我慢することが出来る。悔しさを噛みしめて、それを力にかえることが出来る。


大事な、大事な弟。


燐が皆を守るため物質界を去った後、雪男は随分強くなった。
人の身においてあれほどまで力をつけるためには、それこそ血の滲むような、大変な努力をしたのだろう。そう思った。
虚無界の女王として許可なく物質界に顕現した悪魔を刈るために、もといた物質界に来てから、燐はずっと見ていた。遠くから、こっそり、気付かれないように。


本当はそばにいきたかった。

歯をくいしばり頑張っている弟を抱きしめて、そんなに頑張らなくても大丈夫だからと告げたかった。
少し力を抜けばいいのにと言いたかった。

でも、今の燐には、出来ない。
燐はここに、物質界にいて、雪男の近くにいるのに。


そばにいるのに、近付けない。


抱きしめることも、声を聞くことも出来ない。
燐が雪男に会いにいったとして、どうなるだろうか。燐は悪魔になってしまった。祓魔師の敵である悪魔が狙う最強であり最悪の敵。それが今の燐。
燐には物質界をどうこうする意思などないが、燐は祓魔師の敵。
今の燐を見て、雪男はどう思うだろう。
拒否するのではないか。あわれむのではないか。


―――死んでくれと、消えてくれと、そう言われるのではないか。


そう。昔のように。
昔、燐を守るために、修道院の皆は誰もが必死で戦ってくれた。でも被害は大きく、そしてひどくなる一方だった。

そんな時、雪男は言った。


姉さん、死んでくれ。


そう、言われた。
二人っきりになった時、誰も言わなかった一言を、燐に向かって言った。
僕もすぐ行くから、姉さんがさみしくないように、一緒にいくから、だから、姉さん、死んでくれ。
そう言われ、言葉を失った。


雪男は、真剣だった。


自分も一緒に死ぬから、姉さんも死んでと言われた衝撃。そこまで弟を追い詰めていた自分の宿命と血。


燐が悪魔になることを後押ししたひとこと。
雪男は燐が虚無界に堕ちてから、どうしていたのだろう。何を思っただろう。

歴代最年少で祓魔師になった弟。

会って抱きしめて謝って慰めたいけれど、会うのがこわい。拒否されるのがこわい。またあの言葉を言われるのは嫌だ。それに、燐が会いに行って、雪男が困った立場になったらと思うと会いにいけない。順調に祓魔師としての道を歩んでいる弟の足を引っ張りたくはない。
もし姉が虚無界の女王だと知れると、きっと雪男は大変なめにあう。燐を育ててくれて、最後まで守ってくれた藤本や修道院の皆にも迷惑がかかる。


戻りたい。


そう思う。
餓えるほどに、あの場所に、あのあたたかな場所に帰りたいと願う。

この世界のなか、ちっぽけな灯かりのつくあの場所に、帰りたい。

あそこは光のあたる場所。

悪魔の自分がいてはいけない場所だと思っていても、なお求めるのだ。
帰りたいと、戻りたいと、会いたいと、そう願ってしまう。

修道院の灯かりがギリギリ見える、高い鉄塔の上に立ち、未練がましく灯かりを見つめながら、燐は息を吐く。
こうして修道院を見ているのは、彼等を悪魔から守るため。そう自分に言い訳するが、本当は未練があるから。いつまでも未練を断ち切ることが出来ないから。だから暇さえあれば愛しい人達が住まうあの場所を見てしまう。

あの時、燐に向かって死んでくれと言った雪男。燐は愛する弟に、一緒に死のうと言わせてしまった。自分だけなら、まだいい。でも、雪男が死ぬのはいやだ。
雪男は、燐が死んだら自分も死ぬからと言った。姉さんがさみしくないように、僕もずっと一緒にいるから、と。


弟の悲壮な決意がわかるから。弟が本気で言ったとわかるから、燐は死ねなかった。


自分が死ねばすべて解決という道を選べなかった。


だからこそ、燐は虚無界に行くことにしたのだ。行きたくないけれど、大切なひとを守るために。
雪男のために死ねない燐が、悪魔からの何度目かの襲撃の時、ついに虚無界に行くことにした。
皆が力尽きてぼろぼろになって、もうだめだと思ったからだ。もうこれ以上、燐なんかを守るために傷ついてほしくないから。大切な人達に無理をしてほしくないから。
でも、多分本当は、こんなことが続いて、最初は守ってくれていた優しい人達に愛想を尽かされたり、もう出ていってくれと言われたりするのが嫌だったのかもしれない。
臆病な燐は、大切な人達に嫌われるのが恐かった。
虚無界に行くことを考えると、こわくて、ふるえた。でも大事な人をうしなう方がもっとこわい。そう考えた燐が虚無界へ行こうとしら、獅郎は満身創痍になりながら、行くなと言ってくれた。
最後の最後まで燐に手を伸ばしてくれた。
いつも燐を愛してくれた、大好きな父。
大切な雪男。
気のいい修道院の皆。

あの時燐に向かって死んでくれと言った雪男が強くなったのは、燐を虚無界から取り返すため。そう、メフィストに聞いた。

雪男は、静かだ。

見つめていれば、わかる。雪男が静かに怒っていること。
獅郎も、多分怒っている。
燐が言うことを聞かなかったから。
再び物質界に顕現した燐は、そう思いながらずっと一人で家族の姿を見ていた。
皆がいるあたたかい光のなかに入れない自分は、この空の下、一人ぼっちで立っている。
気を抜いたら崩れてしまいそうな自分を叱咤して、毎日必死ですごす。忙しいのはいい。余計なことを考えなくてすむから。
忙しくても、落ち込んでも、それでもやっぱり家族が恋しいから、暇さえあれば暗闇に灯る灯かりを確認し、そこに入れない自分を省みて落ち込む。
どんな時でも前向きに進むと決めていたのに。虚無界に行ったらもう二度と家族に会えないとわかっていたのに。
燐がこうして一人で落ち込んでいた時、ふらりとあらわれたメフィストが独り言を呟くように、言っていた。
藤本獅郎は燐には怒っていないと。獅郎が怒っているのは、自分自身に対してだと。燐を、娘を守れず辛い決断をさせた自分自身に怒っていると。


十分に、獅郎には十分すぎるほど守ってもらったのに。


そしてまた、燐は目にした家族の、友人の姿に、決意を新たにする。

守るのだと。

自分のせいで強大な悪魔に狙われることになった大事な人達を悪魔の驚異から守る。絶対に。今の燐にはその力がある。修行だってした。昔とは違う。
風に、さらさらと長い髪がなびく。
きららかな輝きを放つ、艶のある髪。
この髪は、燐にとって決意の証。
絶対に守ると誓ったから、その願掛け。
家族と離れたあの日以来、揃えるため以外鋏を入れていない髪の長さは家族と離れたぶんの長さ。
昔はショートだった髪も、随分長くなった。
ぐっと拳を握りしめ見つめていると、一定の距離をとった場所に、二つの気配。
メフィストと、アマイモンだ。
常に燐と一定の距離をとる悪魔たち。
根本的な所で敵か味方かわからないが、少なくとも今は敵ではないとわかる。

「行かないのですか?」

静かに声をかけてきたメフィストに、こたえる。
「どこに?」

どこにいけと?


燐はもう、この物質界に帰る場所はないのに。
メフィストの方を見ることなくこたえると、彼は相変わらず何を考えているのかわからない調子で言ってきた。

「あそこに。あなたの家族のいる、あの場所ですよ」




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